キネ探  「突貫小僧が選ぶ 映画本100冊。」突貫 スペシャル・セレクト 6

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突貫小僧が選ぶ 映画本100冊。 > 突貫 スペシャル・セレクト 6

他の100冊を置いても、これだけは沖縄の映画ファンに是非、読んでもらいたい本ばかりを6冊セレクトしました。本音を言えば、これらの本をみなさんに紹介したいがために、今回のブック・フェアを開催した、と言っても過言ではありません。
どれもこれも、筆者にしか書けないような渾身の“熱作”ばかり。少なくともこの内の一冊は、みなさんの心に深く響くはず!

▼本の写真をクリックするとジュンク堂書店の情報ページが開きます▼

アンヤタサ! 沖縄・戦後の映画 1945〜1955  
山里将人/著 (ニライ社)

アンヤタサ!戦前から今日まで、映画を愛して止まない映画狂人、山里将人氏(山里外科院長)が、自らの体験、プライベートで書き留めたメモ、収集した資料などを元にまとめ上げた沖縄戦後映画興行史。
27年にわたる米軍占領を経験した沖縄は、映画興行においても本土と違った道のりを歩む。収容所巡回上映、フィルムの密輸入、弁士の一時的復活、ベトナム景気、etc…。
県内に200以上あったといわれる映画館の盛衰と4大配給ラインの攻防を通して見えてくるのは、この島が予想以上に映画と密接に繋がっていたこと。注目されつつある沖縄の戦後史を探る上でも重要な一級の歴史書なのだ。
なお、著者の思いと資料を引き継いだのが、私たちが運営するサイト「沖縄映画興行伝説」。こちらもぜひご一読のほどを。(竜次)

沖縄劇映画大全  
世良利和/著 (ボーダーインク)

沖縄劇映画大全岡山在住の筆者が、約10年にわたり、沖縄に何度も通って様々な取材を繰り返して書き上げた渾身の一作。
「何らかの意味で沖縄がテーマや舞台、あるいは物語の背景となっている作品」という定義で沖縄映画を捉え、1910年代からはじまる山あり谷ありの沖縄映画の歴史から、2000年代後半までの沖縄関連劇映画のデータを約500作品収録。
近年の話題作ですら、ほんのり辛口で一刀両断する映画評も心地良く、まさに真の沖縄映画好きのための大変貴重な沖縄映画関連本となっている。
また、ブックフェア期間中には著者である世良氏とのトークライブも開催! イベント前に本書を一読しておくと、より楽しめる事うけあいデス! (松浦)

子役になってはみたけれど 小説 突貫小僧一代記  
青木富夫/著 (都市出版)

子役になってはみたけれど我らが団体名の由来でもあり、昭和初期の名子役「突貫小僧」として一世を風靡した青木富夫氏が、自らの半生を小説風に書き綴った自伝。
役者人生のキッカケになる小津安二郎監督との希有な出逢いにはじまり、清濁合わさった昔の日本映画界の実情、当時の魅力的な俳優たちの様々な逸話など、自身を物語の主人公に見立てて客観的に、かつ生々しく描いている。
実際に経験したからこそ記すことの出来る数々のエピソードが、珠玉の文章で華やかに映し出される。80歳目前の筆者が初めて手がけたこの本の執筆を、ゴーストライター無しで書いたというから、オドロキだ。
突貫小僧(青木富夫氏)のファンブックとしては勿論、小説としても十二分に堪能できる逸品。 (松浦)

子宮会議  
洞口依子/著 (小学館)

子宮会議コケティッシュな魅力と卓越した演技力で映画人、テレビ人に愛される女優、洞口依子。前途洋々と思われた彼女に、突然の悲劇が降りかかる。子宮頸がん…。子宮と卵巣を全摘出する大手術に挑み、結果成功するも、その後も過酷な後遺症と闘う日々が続く。
本著はその始まりから女優に復帰するまでを赤裸々に記録しているが、単なる闘病記に終わらない。その白眉は、彼女の軽やかで幻想的な文章表現。病室を遊園地に例え、失うことになる子宮と己の半生を語り合う。
悲劇の中にあって輝く生の喜びを的確に捉えた筆さばきに、彼女がどこまでも“表現者”であることに気づかされる。 (カカズ)

定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー
ヒッチコック、トリュフォー/著 山田宏一/訳 (晶文社)

映画術 ヒッチコック トリュフォー映画好きならずとも知らぬ人のいない巨匠、アルフレッド・ヒッチコック。
本作はそんなサスペンス映画の巨人へ、ヌーヴェル・ヴァーグの旗手にして稀代の「ヒッチコック・マニア」であるフランソワ・トリュフォーがインタビューを敢行したもの。
演出法や撮影法、アイデアの出し方などを通して、一流の「恐怖の作り出し方」を探っていくのだが、中でも名作『サイコ』については、40カットもの劇中写真を掲載しており、映画史に燦然と輝く「伝説の殺人術」を余すことなく伝えてくれる。 (竜次)

映画監督 山中貞雄
加藤泰/著 (キネマ旬報社)

映画監督・山中貞雄わずか28歳で急逝した映画監督、山中貞雄。監督となってわずか5年のうちに26本もの映画をモノにしながらも、現存するフィルムは3作品。…にも関わらず、彼の先輩の小津を始めとする多くの映画人に多大な影響を与え続けている。
本著はそんな伝説の人間のノンフィクション。サイレントからトーキーへと移行しつつある1930年代の京都の映画界を舞台に、スタッフ、役者から愛された若者の愛の詰まった青春物語となっている。
本著を綴るのは、これまた伝説の映画監督、加藤泰。山中は著者の母方の叔父にあたるとか。 (竜次)