主催:桜坂コミュニティシネマ上映会
※ 劇場の都合により、スケジュールが変更する場合があります。
桜坂劇場
http://www.sakura-zaka.com/lineup.html
★2008年 10/25(土) 〜 10/31(金) タイトルをクリックして下さい。
グラマ島の誘惑
グラマ島の誘惑
1959年 カラー 東京映画
原作:飯島匡 脚本:川島雄三 撮影:岡崎宏三
音楽:黛敏郎 美術:小島基司
出演:森繁久彌、フランキー堺、桂小金治、三橋達也、
浪花千栄子、轟夕紀子、宮城まり子、八千草薫、
岸田今日子、淡路恵子、春川ますみ、左卜全
実際に起こった「アナタハン島事件」のパロディとして描かれた飯島匡の戯曲「ヤシと女」を映画化。南海の孤島に漂流した皇族や慰安婦らの奇妙な生活が、スラップスティックに展開する。原作に登場した朝鮮人の女性が、映画では沖縄の女性に変更されていることも興味深い。
公開当時は不評だったらしく、川島自身も「失敗作です」と後述しているが、近年は再評価の動きが高まっている。
この作品が撮られた '58年の秋は、当時の皇太子(今上天皇・明仁)と民間人の女性(現皇后・美智子)とのロマンスのうわさ話が、世間で “密かに” 盛り上がっていた時期である。婚約が正式に決まるまで、この話題はメディアで大きく取り上げられなかったらしい。そんな皇族ネタがタブー視されていた頃に生み出された危険な映画である。
また、川島監督の皮肉な提案で、海外からわざわざ取り寄せたB-29の残骸を銀座の街中で引っ張り回してこの映画の宣伝に利用したというエピソードがある。川島監督に言わせると、憎きB-29に対しての「市中引き回しの刑」のつもりだったらしい。この話からも、川島監督の過激でシニカルなキャラが窺われる。
コラム「ぼくとグラマと具良間島」参照
資料室「アナタハン島事件とは…」参照
洲崎パラダイス 赤信号 突貫小僧出演!
洲崎パラダイス 赤信号
1956年 モノクロ 日活
原作:芝木好子 脚本:井手俊郎、寺田信義
助監督:今村昌平 撮影:高村倉太郎 音楽:真鍋理一郎
美術:中村公彦
出演:新珠三千代、三橋達也、轟夕紀子、河津清三郎、
芦川いづみ、牧真介、桂典子、小沢昭一、青木富夫
東京の名遊郭街の一つであった江東区の「洲崎パラダイス」を舞台に、そこでたくましく生き抜く人々を描いた作品。生活力のある女(新珠)と、彼女についていくしかない情けない男(三橋)との対照的な男女関係が面白い。
川島作品の中でも断トツの人気を誇る『幕末太陽傳』の主人公の飄々としたクールな生き様が監督自身を投影したキャラであることは、川島ファンの間では有名である。
ところが、川島監督のプライベートを知る人々の証言によると、彼は母性本能をくすぐる一面も持っており、この作品で三橋が演じる男も彼の分身として描かれている可能性が高い。川島本人も『幕末太陽傳』よりこの作品の方が好きだと語っている。
「突貫小僧を探せ!」参照
わが町
貸間あり
貸間あり
1959年 モノクロ 東京映画
原作:井伏鱒二 脚本:川島雄三、藤本義一
撮影:岡崎宏三 音楽:真鍋理一郎 美術:小島基司
出演:フランキー堺、淡島千景、乙羽信子、小沢昭一、
桂小金治、藤木悠、清川虹子、浪花千栄子、山茶花究
大阪のとある貧乏アパートに暮らす人々のドラマを、生活感あふれるタッチで滑稽に描いた群像喜劇。フランキー堺の扮するよろず請負人(何でも屋)の主人公の器用さとその頼られぶりが、川島監督の代表作『幕末太陽傳』で同じくフランキー堺が演じた居残り佐平次を彷彿させる。
現在も作家として活躍する藤本義一が、川島監督と共同で脚本を手がけた。藤本は撮影所でバイトのようなことをしていた学生時代に、憧れの川島監督と出会ってすぐに弟子入りしている。
この作品の原作は、川島監督の大好きな作家・井伏鱒二の小説だが、映画を見た井伏本人から「人間の描き方がどぎつく、汚い感じだ」とお叱りを受けたようだ。
川島監督はそれを受けて
「小生としては悲鳴をあげていることが理解されなかったのは、悲しく残念です。汚さの中で、自分の悲しみを出したかったのに、反対に解釈されてしまった。作者としての自分が泣いていることが、ちょっとも分かってもらえなかった。そういうところで、逆に日本の貧しさを考えたりもしました…」
と嘆いている。
しかしその思いは、後年の映画ファンにきちんと届いたようで、川島監督の死後に再評価された作品の一つである。
ちなみに、川島監督の墓に刻まれている「サヨナラだけが人生だ」という言葉は、この作品の主人公が書いた送別会の挨拶文からきている。
★2008年 11/1(土) 〜 11/7(金) タイトルをクリックして下さい。
愛のお荷物 突貫小僧出演!
愛のお荷物
1955年 モノクロ 日活
脚本:柳沢類寿、川島雄三 助監督:今村昌平、浦山桐郎
撮影:峰重義 音楽:黛敏郎 美術:中村公彦
出演:山村聰、三橋達也、轟夕紀子、北原三枝、小沢昭一、
高友子、東野英治郎、殿山泰司、東恵美子、
菅井きん、フランキー堺、山田五十鈴、青木富夫
自分の才能を評価してくれない松竹を離れた川島監督が、日活に移籍して初めて手がけた作品。
高度経済成長に伴う人口増加の最中、人口抑制を訴える厚生大臣の一家で、大臣の妻や娘たちが次々と懐妊する皮肉な状況をコミカルに描いている。
都会の街中から始まるオープニング・シーンは川島作品のお得意パターンだが、この作品では編集に凝っていて印象深い。ナレーションを務めた加藤武はこの仕事をキッカケに映画界に関わることになったそうだ。川島作品の常連、三橋達也が一人三役演じているのも見どころ。
共同で脚本を手がけた柳沢類寿は、川島監督の松竹時代からの名パートナーであり、悪友でもある。川島監督より先に日活へ移籍しており、川島監督の移籍も彼がキッカケを作ったと言われている。
2人は松竹時代、会社に内緒で他の同志数名と共に映画業界を批評した新聞を発行し、それが会社にバレて柳沢はクビになりかけている(風見鶏の川島監督は上手く上司と掛け合い、おとがめなしだったそうだ)。
ちなみにこの作品は、日活移籍後の川島監督がなかなか企画を出さないので、柳沢が川島監督の尻を叩いて作らせたらしい。
「突貫小僧を探せ!」参照
女は二度生まれる
女は二度生まれる
1961年 カラー 大映東京
原作:富田常雄 脚本:井手俊郎、川島雄三
助監督:湯浅憲明 撮影:村井博 音楽:池野成
美術:井上章
出演:若尾文子、藤巻潤、山茶花究、フランキー堺、
山村聡、山岡久乃、高野通子、高見国一、中条静夫
東京の九段下で芸者として働く女性の自由気ままな恋愛を、川島監督らしい冷めた視点でとらえた作品。
川島監督がちょくちょくこだわる、敗戦後の日本でしたたかに生きようとする人間の悲しさがここにもある。また、同じく彼がこだわっている天皇制に対する皮肉もちらりと顔をのぞかせる。
この作品を撮るにあたって川島監督は「若尾を女にしてみせます」と宣言したらしいが、その言葉通り、若尾文子の妖艶な魅力を上手く引き出している。この成功は、のちに彼女を主役に起用して撮った『雁の寺』( '62)や『しとやかな獣』( '62)にも引き継がれる。
しとやかな獣
しとやかな獣
1962年 カラー 大映東京
原作・脚本:新藤兼人 助監督:湯浅憲明 撮影:宗川信夫
音楽:池野成 美術:柴田篤二
出演:若尾文子、伊藤雄之助、山岡久乃、浜田ゆう子、
船越英二、川畑愛光、高松英郎、小沢昭一、
山茶花究、ミヤコ蝶々
欲にまみれた意地汚い人々の駆け引きをブラック・ユーモアを交えて展開させるシニカル・ドラマの傑作。数カット以外、ほとんど団地の一室で展開する。
この作品で川島監督は室内劇に魅力を感じたのか、のちに撮る予定だった『江分利満氏の優雅な生活』では、主人公が勤める会社内から一歩もカメラが外に出ない内容を考えていたらしい。ところが川島監督が亡くなったため、同作品の監督は後輩の岡本喜八が引き継ぐことになる。