ジョー・ダンテとジョン・ベルーシの意外な関係 「フライング・コップ」
今年3月に開催された沖縄国際映画祭。その審査員としてジェリー・ザッカー監督が来沖した。(ザッカー監督インタビューはこちらへ)
そのジェリー監督と、兄のデヴィッド・ザッカー、そしてジム・エイブラハムズ(通称:ZAZ)が手がけた「フライング・コップ」(’82)というテレビ番組があった。
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本国アメリカでも人気が出ず、わずか6話で打ち切られた番組だそうだし、日本ではもちろん未放映。ビデオで発売はされたものの、当時それほど注目はされなかったと記憶しているのだが、その後『裸の銃(ガン)を持つ男』(’88)として映画化され大ヒットしたので、映画版の方はご存じの方も多いだろう。
さて、映画版の元になった「フライング・コップ」全6話のうち、我らがダンテは2本を演出している。
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第二話の「恐怖のリング」と、最終回「フランク・ドレビン・スーパースター」がそれだ。
「恐怖のリング」は、八百長ボクシングにからんだ誘拐事件、「フランク・ドレビン・スーパースター」では麻薬の運び屋が殺害された事件。これらを解決するために、レスリー・ニールセン演じる主人公フランク・ドレビン警部が潜入捜査を行って解決するわけだが、全6話ともドレビン警部が勘違いだらけの聞き込みや無意味な銃撃戦の後、なぜか解決してしまうもののため、ストーリー云々よりも、25分の放映時間の中にどれだけギャグを詰め込むかが重要視されていると言って良いだろう。(アメリカ版DVDの特典映像では、レスリー・ニールセンが「あまりにもギャグが多すぎて、視聴者が疲れてしまうため打ち切りになった」と発言している)
そういう目的の番組なので、ストーリーは正直どれも同じようなものだけれども、とにかく隙間無くギッシリ詰め込まれたギャグのスピード感は、当時のコメディとしては前衛的で、『裸の銃〜』よりもコアなファンが多い。
なかでも、毎回ドレビン警部が頼りにする、何でも知っている情報屋(事件の情報だけではなく、心臓バイパス手術の方法を聞きに来る医者などもいる)や、無駄な実験しかしない鑑識課の職員、そして刑事ドラマのラストシーンにありがちな静止画風に出演者が動きを止めるといったお約束のギャグなどは、堂本剛主演のテレビドラマ「33分探偵」でも引用されていた。よっぽどスタッフにこの番組の熱烈なファンがいたのだろう。
それはともかく、「フライング・コップ」でダンテが演出した2話とも、番組全体のフォーマットが統一されているため、SF・ホラー映画のマニアックなネタが満載の他のダンテ作品とは印象は異なる。正直言って「ダンテらしさ」は非常に少ない作品ではある。
それでも、殴られたボクサーが、ラウンドの間に特殊メイクされていくところや、薬を飲まされた運び屋が見る幻覚にSFテレビ番組「宇宙空母ギャラクティカ」の一シーンが登場するあたり、ダンテの趣味がかいま見えるようだ。
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「フライング・コップ」はダンテのテレビ演出初作品だが、そもそもダンテがテレビ界で仕事をするようになったのには、厳しい現実があったからのようだ。
1976年にプロの映画監督としてデビューしたダンテだったが、手がけた作品は低予算のホラー程度で、まだまだ一般に名前は売れていない。ちょうどその頃ダンテが企画していた映画も中断したため、おそらくは生活のためもあって、テレビの仕事をすることになったのではないだろうか。
1979年にダンテの友人、アラン・アーカッシュが監督した『ロックンロール・ハイスクール』(日本未公開)で、ダンテは共同原案と、クレジット無しで一部の演出を担当しているのだが、実はZAZのジェリー・ザッカーもこの作品にクレジット無しで参加している。その繋がりでダンテは「フライング・コップ」に参加したのではないかと思われる。
結果的にダンテは人脈を広げることと、テレビでの仕事の仕方、さらにコメディ演出を磨くことが出来たのではないだろうか。
そのおかげと言っていいのかどうか、後に「ダンテらしさ」全開のテレビ番組も手がけることになるのだが、これはまた別の機会に。
ところでアメリカのテレビ番組では、毎回ゲストスターが出演して、オープニングクレジットで紹介されることが多いのだが、「フライング・コップ」の場合、ゲストスターはオープニングのみ。そして毎回殺されるだけの数秒間出演するというギャグがあった。ダンテ演出の「恐怖のリング」では、『ブリット』(’68)、『地球爆破作戦』
(’70)「ROOTS/ルーツ」
(’77)のジョーグ・スタンフォード・ブラウンが落ちてきた金庫につぶされる役で出演している。
そして最終回「フランク・ドレビン・スーパースター」には『ジャンヌ・ダーク』(’48)、『黒い絨氈』
(’54)などの名優ウィリアム・コンラッドが出演している。しかし、この最終回のゲストスターは、当初『1941』
(’78)、『ブルース・ブラザース』
(’80)で大人気だったジョン・ベルーシが出演することになっていたという。
この噂について、ジェリー・ザッカー監督に直接聞くことが出来た。
良實:「フライング・コップ」にベルーシが出演する予定だったのは本当ですか?
ザッカー:本当だよ。予定じゃなくて、オープニングに登場して死んでもらうゲストスターとして、実際ベルーシのシーンは撮影したんだ。海の中に沈められて死んでしまうという役でね。ところが、その回を放映する前になってベルーシが亡くなってしまったんだ。(ベルーシの死去は1980年3月5日。「フライング・コップ」最終回の放映日は同年7月8日)
それでベルーシが死ぬシーンは自粛して、代わりにウィリアム・コンラッドを起用したんだ。
良實:それは残念ですね。
ザッカー:もっと残念なのは、『裸の銃を持つ男』がヒットした頃、「フライング・コップ」を再放送する話があって、その時にベルーシのシーンを戻して放送したかったんだ。でも、その映像が見つからなくてね、結局幻になってしまったよ。
ダンテ演出のベルーシ。見てみたかったなぁ。
フライング・コップ
エピソード2:恐怖のリング
エピソード6:フランク・ドレビン・スーパースター
原題:Police Squad!
Season1, Episode2:Ring of Fear(A Dangerous Assignment)
Season1, Episode6:Testimony of Evil(Dead Men Don’t Laugh)
各25分 カラー モノラル
画面サイズ1.33:1
アメリカ放映日「恐怖のリング」1982年3月11日、「フランク・ドレビン・スーパースター」1982年7月8日
日本ビデオ発売1984年頃
監督:ジョー・ダンテ
脚本:ティノ・インサナ、ロバート・ウール
製作総指揮:ジム・エイブラハムズ、デヴィッド・ザッカー、ジェリー・ザッカー
製作:ロバート・K・ワイス
音楽:アイラ・ニューボーン
出演:レスリー・ニールセン、アラン・ノース、レックス・ハミルトン、エド・ウィリアムズ他
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