ダンテ作品のDNA 『メイフィールドの怪人たち』
ジョー・ダンテという監督は『グレムリン』が大ヒットしすぎてしまったせいで、いまだに派手な合成や、特殊メイクなどを駆使するSFX映画の作家というイメージがついてしまっているようだ。
確かにダンテは好んでそういうジャンルの作品を多く手がけてはいる。いつまでも少年のような…という言い方はキレイすぎるので「ガキ」と言い換えるが、ダンテがガキの頃好きだったSFやホラー、ファンタジー、アニメなどの要素をいつまでたっても自作の中に織り込んできていることからもそれは明らかだろう。
もちろんそんな要素は、ある意味「お遊び」程度にしか過ぎない部分もあるのだが、当時まだまだ「ガキ」だった僕も、そういう部分ばっかり楽しんでいたダメな観客だったので、ダンテの1989年作品『メイフィールドの怪人たち』は、ちょっと拍子抜けした一本だった。
というのも、『メイフィールド〜』には、一番わかりやすい「お遊び」である派手なSFXが使われていなかったからだ。その代わり “売り” になったのは主演のトム・ハンクス。日本では現在ほどの人気や知名度は無かったが、アメリカでは「サタデー・ナイト・ライヴ」「ハッピー・デイズ」などのテレビ番組や、映画では『スプラッシュ』('84)や、『ビッグ』
('88)で大人気のコメディアンだった。
そんなスターをキャスティングしたコメディ映画として公開された『メイフィールド〜』だったため、僕は見てもいないうちから「ダンテもこんな普通の作品を撮るなんて、ダメになったもんだ」などと、偉そうなことを思っていた。
まぁ一応劇場に行って、キチンと見たんだけど、やはり「SFXを使ってないから」というだけの、かなり痛すぎる判断で「ダンテの失敗作だ」という結論を僕は持ってしまっていた。
さて時は流れ、ダンテが新作映画をあまり発表していなかった時期。すでに “ダンテ地獄” に堕ち、立派なダンテ中毒者となっていた僕は、ちょいちょいレンタルビデオ屋で過去のダンテ作品をレンタルしては渇きをいやしていた。そして再び『メイフィールド〜』と巡り会った。いや正直言うと「もう『メイフィールド〜』しか見直すものがない」から、渋々レンタルしたような気分だった。
その頃の僕は過去の名作、迷作も含めたSF、ホラー映画のビデオをレンタルしまくってたおかげで、改めて『メイフィールド〜』を見直したときに、ダンテがこの映画で何をやろうとしたのかがようやく分かった。
この映画が目指していたのは、1950年代から70年代に多くのホラー映画を作ったイギリスの会社、ハマー・フィルム・プロダクションの作品群と、さらに70年代後半におこったホラー、オカルトブームで作られた映画群へのオマージュだったのだ。
そう思って細かい部分をじっくり見てみると、物語の中で『センチネル』('77)というオカルト映画のことを語ったり、トム・ハンクス演じる主人公・レイが深夜見ているテレビに映るのは、これまた70年代のオカルト映画ブームを作った『エクソシスト』('73)や『悪魔の追跡』
('75)といったセレクト。いかにもマニアックなダンテらしいネタだ。
特にレイの隣人、ウェルナー・クロペック医師を演じるヘンリー・ギブソンの姿や衣装は、ハマー・フィルムの作品でマッド・サイエンティスト役や吸血鬼ハンター役を演じた戦後三大怪奇スターの一人、ピーター・カッシングを明らかに意識したキャラクターだ。
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さらに多くのダンテ作品で音楽を手がけた大御所ジェリー・ゴールドスミスも、そんなダンテのノリに合わせ、コテコテのホラー映画風の曲まで聴かせてくれる。
これらダンテの「お遊び」は、決して「お遊び」のネタとしてだけ利用してるわけではなく、しっかりと物語を進行させるための役割を担っているし、当時の作品やスタッフらに対するリスペクトさえも投影している。
最初に見た時には気づかなかった(知らなかった)ダンテの意図が隅々にまで行き届いた『メイフィールド〜』。単に「SFXを使ってないから」なんて情けない理由で嫌ってしまっていた自分が恥ずかしい。
いい歳をした男たちが「ガキ」のように「ごっこ遊び」をする楽しさ。そんな子供っぽさと、過去の作品に対する真剣なオマージュ。ただのパロディとは作り手の意識の高さが違うのだ。これは『グレムリン2』や『マチネー』
…いやいやダンテ作品の全てに刻み込まれたDNAなのである。
メイフィールドの怪人たち 原題:The 'burbs
101分 カラー ドルビーステレオ
画面サイズ1.85:1
アメリカ公開日1989年2月17日
日本公開日1989年7月29日
監督:ジョー・ダンテ
脚本:ダナ・オルセン
製作:マイケル・フィネル、ラリー・ブレズナー
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
撮影:ロバート・スティーヴンス
出演:トム・ハンクス、キャリー・フィッシャー、ブルース・ダーン、リック・デュコモン、コリー・フェルドマン、ヘンリー・ギブソン他
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