スピルバーグからの贈り物 『グレムリン』

 監督デビュー以来、ホラー、SF、コメディと、コアなファンが多いジャンルの映画ばかりを手がけてきたジョー・ダンテ。まぁあまりデートで見に行くような映画には選ばれないだろうし、まして女性だけで見るものとは思われてない気がする。要するに「男の子」向けの監督なんだろうなぁ。
 そんなわけで「ジョー・ダンテって誰?」という人も多いと思う。しかし、ワタクシはこう信じている。

「ダンテ作品には、映画の全てがある!」

 そういう意識でダンテの映画を見続けてきたワタクシは、気がつけばすっかりダンテのとりこ。ダンテの地獄に堕ちてしまったのだ。
 

で、そのダンテ地獄に一人でも多くのハマってもらうため、このブログではダンテの作品をあれこれと解説していこう。
 それにしてもこんなに「ダンテ」の名前が連呼されるブログなんてここだけだよなぁ。
 前置きが長くなったけど、記念すべき一発目は、ダンテ作品の中でおそらく一番メジャーな『グレムリン』('84)からスタート!

 主人公の青年・ビリーの父親がチャイナタウンで買ってきたクリスマスプレゼントは、モグワイという不思議な生物だった。彼はそれにギズモと名付けることにするが、その生物を飼うには三つの約束があるという。
 一つ、明るい光に当てないこと。
 一つ、水に濡らさないこと。
 そして最後の一つ、絶対に真夜中過ぎに食べ物を与えないこと。
 もちろんビリー青年は、この三つの約束を守ることができず、小さな緑色の怪物(グレムリン)が大繁殖し、街は混乱におちいってしまう。

 『スター・ウォーズ』('77)大ヒットのおかげで、80年代にはSFX(今で言うVFX。古い言い方なら特撮ですな)ブームというのが巻き起こった。SFXを売り物にした超大作が続々と公開され、夏休みや正月の目玉作品は軒並みその手の映画ばっかり。
 『グレムリン』が公開された1984年の年末は、久しぶりに復活した『ゴジラ』、そして『ゴーストバスターズ』。その三本のどれが一番ヒットするのか、それぞれの作品名の頭文字をとって「3G決戦」なんて呼ばれたのも懐かしい。
 ともかく、そんな空前のブームの中『グレムリン』は公開されたわけだが、まだジョー・ダンテという名前は一般的に認知されておらず(あ、今もそうか)、その代わり『E.T.』('82)で全世界的に大ヒットをとばしたスピルバーグがプロデューサーだったことで、ポスターやチラシをはじめとした宣伝文句にはドでかく「スピルバーグからの贈り物」なんてコピーが踊っていたものだ。
 ところが『E.T.』のような心温まるファンタジーと思って『グレムリン』を見に行ったら、前半こそギズモのキュートさにほのぼのとするものの、グレムリンが大繁殖してからは、完全にホラー映画のノリになってしまうのだ。
 徐々にカメラアングルは傾き、照明も不気味さを醸しだし、観客の不安感をあおり始める。残酷な描写も増え、挙げ句の果ては死人まで出てしまう。
 アメリカでは「こんな残酷な映画を子どもに見せるな!」と劇場主に抗議する親もいたらしい。

 しかし、この展開の変化こそダンテの狙ったものだ。当時のインタビューでダンテはこう語っている。
 「(この作品のシナリオのどこに一番魅かれたか)ビリー青年とギズモと名付けられたモグワイの友情がとってもチャーミングだと思った。モグワイが全てギズモみたいな愛すべき性格だったら、人々の心はなごみ世界はバラ色だ(笑)。しかし人間も同じだが善人ばかりではない。むしろずるい人間の方が多い。(中略)人間のほんのちょっとした犯ちで、たちまちもっとも狂悪なモンスターに大繁殖する。この極端な善悪のコントラスト、エスカレートのすごさが僕を最も魅きつけたものだ。人間は昔からいつも“ほんのちょっとした犯ち”を繰り返してきているだろう、それが取り返しできない大惨事になる(笑)。しかも今度の映画では、たった3つの易しい掟しかないのに、それが守れそうで守れないこのスリル!『グレムリン』は人間の本質をついている現代の最高の“童話”だよ」

 前半のほのぼの路線からホラーへと変化したあと、さらに映画はドタバタアニメのように変わる。さっきまで人間を襲っていたグレムリンたちは、パブで酒を飲んで酔っぱらい、ブレイクダンス(当時流行ってたのだ)を踊り、映画館で『白雪姫』('37)を見て大合唱する。効果音も「ビヨヨ〜ン」とか「ピヨピヨピヨ」などと、完全にアニメのノリなのだ。

 一本の映画でありながら、まるで多重人格のようにムードがコロコロと変わるこの展開は、本当に下手くそな監督が演出すると、まとまりも何もないひどい作品になってしまうだろうが、ダンテはこれを上手くまとめあげた。
 多くの観客が「スピルバーグ的作品」を期待したはずだが、ダンテはスピルバーグという大看板の後ろからこっそりと、しかし大胆に「ダンテ」という看板を掲げてきたのだ。
 「スピルバーグからの贈り物」とは、実はジョー・ダンテという監督のことだったのではないかと今さらながら思うのだ。

グレムリン 原題:Gremlins
106分 カラー ドルビーステレオ
画面サイズ1.85:1
アメリカ公開1984年6月8日
日本公開1984年12月8日

監督:ジョー・ダンテ
脚本:クリス・コロンバス
製作:マイケル・フィネル、キャスリーン・ケネディ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
撮影:ジョン・ホラ
出演:ザック・ギャリガン、フィービー・ケイツ、ホイト・アクストン、コリー・フェルドマン他

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コメント(4)

ねくすとどらごん携帯 :

『グレムリン』の日本公開時って小学生だったんですが、この頃は他に『E.T.』や『グーニーズ』、『ラビリンス』とガキンチョが狂喜乱舞するような映画が次々と公開されていて最高でしたね。タイトルを聞くだけであの頃の情景が甦ってきて胸の奥底がきゅ~ってなります。

良實 :

>ねくすとどらごん
 21世紀になったいまでも、そんなガキンチョ狂喜乱舞映画ばっかりに心を奪われっぱなしのワタクシですよ。
 たぶんジョー・ダンテもそんなガキンチョなヤツなのではないかと思うんだよねー。

やりましたね!
もう、絶対にダンテを語りたおしてください!
こういうの、たまらなく好きです。

良實 :

夢影博士さま。返事が遅くなりましたが、コメントありがとうございます。
まだまだ語りたおすほどの力はありませんが、地道にやっていくつもりです。
よろしければちょくちょく見に来てやってください。

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このページは、良實が2008年4月12日 04:42に書いたブログ記事です。

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