『WALL・E/ウォーリー』  夢も希望もない社会を救う、イノセンス。

※注意! 結末が分かる内容が含まれています。
ウォーリーイラスト完成.jpg
フルCGアニメという枠を超えて描きたかったこと

 ピクサーの新作といえば外れがないことで有名だ。
 
 当初はフルCGアニメの目新しさばかりが喧伝されていたが、今では彼らの生み出すキャラクターの秀逸さ、物語のオリジナリティ、映画演出の鋭さ、過去の名作に対してのシャレたオマージュなどの質の高さが評価されている。
 
 そして最新作 『WALL・E/ウォーリー』ではCGだけではなく、本物の役者による実写場面まで登場する。アニメの枠さえ超えようとして、彼らは何が作りたかったのか?  監督・脚本のアンドリュー・スタントンは、とあるインタビューでこう答えている。
 「少年時代、『スター・ウォーズ』(`77)や『エイリアン』(`79)などのSF映画が私の心をときめかせてくれた。あの感覚を今度は私が多くの人に伝えたい-」

重機とipodの恋、サイレントで見せるロボットの内面

 未来。人類は世界中をゴミだらけにした挙句、地球を捨てて外宇宙に脱出してしまう。その間、ゴミを片付けるのはロボットたち。それから700年余り。ウォーリーという名の廃棄物処理ロボット一台だけが生き残り(その姿形は『ショートサーキット』(`86)のナンバー・ファイブと『E.T.』(`82)をかけあわせたよう)、今日もせっせとゴミを片付けていた。
 そこに真っ白でツルツルのボディとタマゴ型のフォルムを持ったロボットが宇宙から舞い降りる。彼女(?)の名前はイヴ。ペットのゴキブリ以外の他者に700年ぶりに出会ったウォーリーは興味を覚え、やがて恋に落ちる。重機のような汚れきったウォーリーとiPodのようにピカピカのイヴ。二台のロボットが公園でたたずむ構図は美しい。
 これはデザインの勝利だ。
 
 それにしてもすごいと思ったのが、このあたりの展開をほぼ全てセリフを使わずサイレントで進めてしまっていること。僕たち観客は、ウォーリーの金属製の手の細かな動きや双眼鏡型の瞳から心のうつろいを読み取り、やがて感情移入するようになってしまうのだ。彼らがロボットであるのにもかかわらず。


 消費社会のなれの果て

 ウォーリーはイヴとともに宇宙に飛び出し、巨大な宇宙船の中で自堕落な生活を送る人類たちと出会うことになる。人々は移動式のベッドで寝そべって四六時中ネット三昧。宇宙食(?)を飲みながら、溢れる広告の誘いに疑問を抱くことなく右から左に習えの無脳状態。おかげでブクブクに太って立って歩くことも出来なくなっていた。

 これって、そのものズバリ現代の消費社会への強烈な皮肉!
ニート、引きこもり、呼び名は何でも良い。要するに日本やアメリカなど豊かな先進国で進行しつつある人間=家畜化のなれの果てがこの宇宙船というわけなのだ。

 うすら寒さを通り越して爆笑してしまう未来社会を支えているのはロボットたち。管制業務に掃除、交通整理、警備、執事にお化粧に至るまで労働は全てロボットによって行われている。壊れてしまったロボットたちが収容される場面があるのだが、そこがまるで精神病院のように描かれていてニヤリとしてしまう。無人となった町で精神病院の患者たちがさまよう『まぼろしの市街戦』(`66)をご存じの方ならなおさらだろう。

 夢や希望もなく、刹那の快楽だけを追い求める「肉塊=人類」に出会ったウォーリーは、いつもの調子で周囲を大混乱に巻き込みつつ、愛するイヴを追い続ける。

 
 イノセンス(無垢なるモノ)が到達するささやかな希望

 そういえば、ウォーリーをはじめとするロボットたちのコミカルな動きはまるでチャップリン
バスター・キートン
などのサイレント時代のコメディ俳優のよう。やることなすこと間抜けでドジばかり。けれどいつでも一生懸命で、そこがたまらなく愛くるしい。対価を求めず、愛する者の利のために自らを投げ打つ…。そう、ウォーリーは、人間が失ってしまったイノセンス(無垢)の象徴なのだ。

 一方、うつろな目をした未来人たちもいつしかウォーリーたちと連帯する。ウォーリーの闖入(ちんにゅう)で自らの役目に気づいた船長は、まるで子どものように失われた知識をはしゃぎながら吸収し、やがて希望を胸に母なる地球に帰還する。
 このくだりは、支配者である未来人と奴隷であるロボットたちが、イノセンスという共通項で絆を結ぶ場面であり、感動的ですらある。

 だが、そこはゴミと荒野ばかりになってしまった死の星。

 けれど物語はそこで終わらず、そんな未来人たちに、希望となるささやかなプレゼントを与えてくれる。ピクサーらしい美しいエンディングだ。

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コメント(1)

ザ・パワドリ50 :

ショートサーキットのナンバー・ファイブに
似てるからオマージュー的な要素が
鑑賞意欲を阻害された感がオイラには
あって観ることは無かったんですが、

凄い哲学的に練り上げられた
映画なんですね〜。
ほとんど台詞無しで進行するストーリー
古典的ではあるものの非常に難易度が高い
はずなんで仕上がり良さそうです。

観てみます。

ロボットという言葉を生み出した
カレル・チャペックの時代から
人間とロボットの関係において

「永遠の命題」

なのでしょう。

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このページは、が2009年1月21日 21:16に書いたブログ記事です。

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