沖縄国際映画祭審査員、ジェリー・ザッカー監督インタビュー

Zucker01.jpg 大盛況のうちに終了した沖縄国際映画祭。「Laugh & Peace」をテーマにしたこの映画祭、沖縄出身のゴリ監督の初長編作品『南の島のフリムン』をはじめとした多くの作品に注目が集まりましたが、忘れてはいけないのがそれらの作品を審査した審査員の皆さん。

その中でも、今回『ケンタッキー・フライド・ムービー』('77)、『裸の銃(ガン)を持つ男』('88)など、多くのコメディ映画を手がけ、さらにコメディ以外でも『ゴースト/ニューヨークの幻』('90)などの作品を送り出してきたジェリー・ザッカー監督にインタビューを行いました。
コメディ映画の審査員という視点から始まり、コメディ映画の重要性、そして今後の活動予定まで、ギャグも加え、我々インタビュアーを笑わせながら進行する楽しいインタビューになりました。

Q:今回の沖縄国際映画祭の印象をお聞かせください。

ジェリー・ザッカー監督:とても素晴らしい映画祭でした。特に沖縄は景色が凄く良いですね。世界中いろんな所で映画祭が行われていますが、例えば北のアラスカとかロシアとか、そんな寒い所じゃなくてよかったです(笑)
それになんと言っても「コメディ」がテーマとなった映画祭だった点は特に素晴らしかったですよ。

Q:映画祭のテーマが「Laugh & Peace」でしたが、そのことについてはどう思われましたか?

ジェリー・ザッカー監督:最近、世の中には「Laugh」も「Peace」もちょっと足りないんじゃないかと思ってるので、非常に良いテーマだと思います。まぁ僕個人は「Peace」よりも「Laugh」のほうが得意なんだけどね。
アメリカでは「フィール・グッド・ムービー Feel Good Movie」という言い方があるんだけど、つまり心温まる映画というものをみんな必要としてるんじゃないかな。このような辛い世界情勢の中、人々は現実から逃避出来るような物語を求めてるんじゃないかと思うよ。だから、映画を見たあとに心が温まる、そういった気持ちが残るような作品をもっともっと作るべきだし、大事だと思う。心が温まったり、笑ったりとか、そういう感情が残るものがいいと思うので、そういう意味でも素晴らしいテーマを持った映画祭だよね。

Q:コメディ映画の審査は多様性があって難しいと思うんですが、今回審査員をやる際に重視した点というのはどういう部分でしょうか?

ジェリー・ザッカー監督:今回の審査基準には3つの点があって、一つが「オリジナリティがあるか」。二つ目は「ストーリー性」、そして「コメディ」としての出来はどうか?ってところだね。

Q:実際に審査員としてご覧になった日本のコメディ映画はどうでしたか?

ジェリー・ザッカー監督:『BABY BABY BABY! -ベイビィ ベイビィ ベイビィ-』と『鴨川ホルモー』を見ましたが、両方とも素晴らしい作品でした。日本に住んでなければ分からないような細かいこともあるんですが、ストーリーや登場人物など、アメリカ人の僕が見ても理解出来るわけで、そういった部分は分かりやすかったですね。
『BABY BABY BABY!』に関して言うと、出産ということは人間にとって共通したことだし、『鴨川ホルモー』では、学生たちのリアクションなどは国境を越えて通じるものなので、そういう意味でそれぞれのキャラクターに感情移入出来ましたね。

Q:そのことはジェリー監督が考えておられる国際的に通用するコメディ映画の条件と言うことになるんですか?

ジェリー・ザッカー監督:コメディが海外でも通用するにはやはり条件があって、文化や習慣が違っても、テーマーやシチュエーションに外国人でも共感出来ることが必要だと思う。例えば僕がズールー教とか、よく分からない部族たちが出てくるような映画を見ても、登場人物が笑ったり怒ったり転んだりすると、それは同じようにおもしろいと思う。その土地の習慣などから来るものを笑いにすると通じないことがあったりして、それは問題だけど。
例えばアメリカ映画で、アメフトに関するジョークが入ってたりすると、それは外国人には分かりにくいこともあるだろうね。でも同じアメフトを扱った映画でも、アメフト選手が車のカギを閉めてしまって中に入れなくなったとか、何かに怒りを感じていたとか、転んでしまったとか、そういう笑いなら、アメフトを知らなくても通じるわけですよ。

Q:映画祭の企画で『フライングハイ』がビーチ上映されましたが、ご自分で見られてどうでしたか?

ジェリー・ザッカー監督:製作から29年経ってるのに、「映画祭で上映したい」と言ってくれるのは驚きだし、本当に最高だね。この作品を誇りに思うよ。

Q:『フライングハイ』の劇中、飛行機の中でプーッとふくらむ人形(自動操縦装置)があったじゃないですか?あれはどなたのアイディアなんですか?

ジェリー・ザッカー監督:兄のデヴィッドと、ジム・エイブラハムスと一緒に製作した作品なんだけど、その時に「誰がどのアイディアを思いついたのかは言いっこ無しにしよう」って話し合ったんだ。三人に変な競争心が生まれるのもいやなんで、そういうことは言わないようにしようって遙か昔に約束したんだけど、その結果、誰のアイディアかは忘れちゃったんだよ(笑)
まぁ実際、製作の際にみんなでブレーンストーミングする中で、自動操縦装置に切り替わる時にどういう展開にするか?ってのはお互いで話し合いながら生まれてくるものなので、特に誰のアイディアってわけじゃないんだよ。

Q:なぜその質問をしたかというと、あの自動操縦装置のシーンこそ、国際的な笑いだと思うんですよ。

ジェリー・ザッカー監督:そうだと思う!
客室乗務員が操縦席で、自動操縦装置のヒザの上に頭を乗っけるわけだけど、それを後ろから見たら非常にイヤラシイ映像に見えるんだけど、そういうのも日本人には通じてるよね?

Q:エロは国際的に共通ですよ。

ジェリー・ザッカー監督:そう!エロくないとダメだ!(笑)

Q:でも昨日『フライングハイ』を見てた子ども連れの観客は、そのシーンで気まずそうにしてましたよ。

ジェリー・ザッカー監督:ホントに?まぁいろんなアメリカンコメディがあるけど、『フライングハイ』はマイルドな方だと僕は思うんだけどなぁ(苦笑)
確かにシモネタがあったり、ヌードシーンがあったりするけど、観客全員を満足させることはどうしても無理だしね。

Q:「国際的に通じる」という部分も含めて、ジェリーさんの作品は「目で見る笑い」が重要視されてると思うんですが、そういったコメディの手法に影響された作品やコメディアンというのはいますか?

ジェリー・ザッカー監督:古いコメディアンでは三バカ大将がいたけどけど、彼らは「目で見る笑い・ビジュアルコメディ」と言うよりは「肉体的な笑い・フィジカルコメディ」だよね。僕個人はやっぱりビジュアルコメディを作る方が好きだね。
そういう意味ではマルクス兄弟の影響が強いね。あとはウディ・アレンの初期作品。それから「MAD」というマンガ雑誌に影響を受けてるかな。
ただ、ビジュアルコメディもセリフで笑わせるコメディも、どちらが優れてるってことはないと思う。僕の好みとしてはビジュアルコメディが好きだってことなんだ。と言うのはやっぱり映画というものは目に訴えかけるものだからね。例えばかつてのラジオの時代はセリフで笑わせるのが主流だったんだろうけど、映画を作るということで言えば、ビジュアルに重きを置いている。僕的にはビジュアルで訴えかけるコメディが国境を越えると思っているんで、セリフの重要度が大きすぎると、翻訳が難しくなるし、訳せない笑いも出てくるだろうからね。

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Q:ジェリーさんは『裸の銃〜』を代表とするコメディも作られてますけど、『ゴースト』のような非コメディ作品も作られてますよね。その場合、演出上での違いってのはありますか?

ジェリー・ザッカー監督:そうだな…コメディの時は現場にバナナの皮を持ってくよ(笑)
冗談はともかく、コメディと非コメディで多少違いはあるけど、大前提としてカメラの後ろに立ちながら、コメディの場合は「これは観客が笑ってくれるだろうか?」ドラマの場合は「これは泣いてくれるだろうか?」「怖がってくれるだろうか?」「感動してくれるだろうか?」そういうことを自問自答しながら演出していく。つまり観客はどう感じてくれるか?ってことを考えて作ってるんだ。観客とのコミュニケーションだね。これはコメディでも、そうじゃない作品でも欠かせないことだね。

Q:ファンとしてはジェリー印全開のコメディをもっともっと見たいんですけど、今後の活動の予定は?

ジェリー・ザッカー監督:今企画中のロマンティック・コメディが一つあるんだけど、映画製作の現状が難しくなってきてるところがあるから、まだ分からないなぁ。

Q:主演はレスリー・ニールセンですか?

ジェリー・ザッカー監督:(即座に)違うよ!違うと思いたい(笑)
内容はロマンティックコメディで『Friends With Benefits』というタイトルなんだけど、意味はセフレのことなんだ(笑)
まぁそういう内容だから、レスリーには向いてないよね(笑)

Q:『南の島のフリムン』のゴリ監督は『裸の銃を持つ男』の凄いファンで、ジェリーさんにお会い出来ることを非常に喜んでたんですが、そういった芸人さんも含め、コメディ映画を作ろうとしてる人に向けて何かアドバイスはありますか?

ジェリー・ザッカー監督:『裸の銃を持つ男』が好きってのは、凄く頭が良い人だね!(笑)
それはおいといて、コメディ作品を作りたいという人に対して言いたいのは、とにかくカメラを持って撮れ!ってことだね。特に今では編集技術なんかも進歩してるし、ビデオカメラもあるんだし、あまりお金をかけずに作れるようになったんだから。
とにかくやれ!だよ。
もちろん技術的に最低限のことは必要だけど、映像としてどうなのかとか、色がどうなのかとか、カットがどうなのかとか、そんな部分にあまり捕らわれずに、人を笑わせようという目標に注力して作って欲しい。あまり「俺はフィルムメーカーになるんだ」なんて意気込む必要はなくて、とにかく笑わせようってことに力を入れて欲しいね。そして作った作品をドンドン人に見せること。そのリアクションを得て、ドンドン学んでくれ。

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Q:これからも「Feel Good Movie」を作り続けてください。

ジェリー・ザッカー監督:次はきっと「Feel Bad Movie」になるよ(笑)

Q:今日はどうもありがとうございました。

ジェリー・ザッカー監督:アリガトウ!



構成:突貫小僧・武富良實

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このページは、良實が2009年3月30日 16:45に書いたブログ記事です。

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